【ゲノム編集食品入門】安全?表示は?遺伝子組み換えとの違いを徹底解説
ゲノム編集食品ってどんなもの?私たちの食卓と新しい技術
食卓に並ぶ食品を選ぶ際、私たちは「これは安全かしら?」「体によいかしら?」と様々な情報を集めて判断しています。最近よく耳にする「ゲノム編集食品」についても、漠然とした不安や疑問を感じている方もいらっしゃるかもしれません。「遺伝子組み換えとは違うの?」「食べても大丈夫なの?」といった疑問を解消し、ゲノム編集食品について正しく理解するための基本的な情報をお届けします。
ゲノム編集食品とは?遺伝子組み換え食品との違いを分かりやすく解説
ゲノム編集食品について理解を深めるには、まず「ゲノム編集」という技術がどのようなものかを知ることが大切です。
私たちの体や、私たちが食べる野菜、果物、お肉などの生物には、それぞれ特有の設計図のようなものがあります。これを「ゲノム」と呼び、ゲノムの中にはその生物の形や性質を決める「遺伝子」という情報が詰まっています。
ゲノム編集技術は、この遺伝子の一部をピンポイントで「編集」する技術です。例えるなら、本の文章の中から特定の一文字だけを書き換えたり、不要な一文を削除したりするようなイメージです。これにより、特定の良い性質(例えば、病気に強い、栄養価が高いなど)を持つ農作物や食品を効率的に開発できるようになります。
ここでよく混同されがちなのが「遺伝子組み換え食品」です。遺伝子組み換え食品は、もともとは異なる種類の生物から取り出した遺伝子を導入して、新しい性質を持たせる技術です。これは、本に全く新しいページを丸ごと追加するようなものだと考えると分かりやすいでしょう。
一方、ゲノム編集は、その生物が元々持っている遺伝子の中で、必要な部分を狙って改良する技術です。外から遺伝子を入れるわけではないため、より自然な形に近い改良と言われています。
ゲノム編集食品は「安全」なの?現在の科学的知見について
食品の安全性は、私たちの食卓にとって最も重要な関心事の一つです。ゲノム編集食品についても、その安全性は厳しく評価されています。
日本では、ゲノム編集技術を使って作られた食品は、国(厚生労働省や農林水産省)に届け出て、その安全性に関する情報が確認されることになっています。これは、食品が私たちの健康に悪影響を与えないか、しっかりとした科学的な根拠に基づいて評価する仕組みです。
具体的には、 * 遺伝子のどの部分を、どのように編集したのか。 * その編集によって、アレルギー物質や有害な成分が作られる可能性はないか。 * 栄養価などに変化はないか。 といった点が、専門家によって慎重にチェックされます。
現在のところ、ゲノム編集技術によって作られた食品が、従来の品種改良によって作られた食品と比べて特別な危険性を示すという科学的な根拠は見つかっていません。多くの科学機関や国際機関が、ゲノム編集技術の安全性について慎重に評価を進めています。
ただし、新しい技術であるため、長期的な影響については継続的な研究と情報収集が重要であると認識されています。
どうやって見分ける?ゲノム編集食品の「表示」について
「スーパーでゲノム編集食品を見分けるにはどうしたらいいの?」という疑問をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。
日本では、ゲノム編集技術を使って開発された食品は、基本的に安全性が確認された上で流通します。現状では、ゲノム編集食品に対する特別な表示義務は設けられていません。これは、外部から遺伝子を導入する遺伝子組み換え食品とは異なり、ゲノム編集では、既存の遺伝子の一部を改変するだけで、最終的な生成物が既存の品種と区別できない場合があるためです。
しかし、消費者が情報を得られるように、事業者にはゲノム編集食品を流通させる場合、その情報を国に届け出ることが求められています。この届け出られた情報は、厚生労働省のウェブサイトなどで公開されており、消費者はいつでも確認することができます。
情報を確認するには: 1. 厚生労働省のウェブサイトにアクセスします。 2. 「ゲノム編集技術応用食品に関する情報」のような項目を探します。 3. 届け出られたゲノム編集食品の名称や、開発された目的などの詳細情報が掲載されています。
このように、店頭での明確な表示は現状ありませんが、国が情報を公開することで、消費者が自ら情報を収集し、判断できるような仕組みが整えられています。
どんな食品があるの?具体的なゲノム編集食品の例
日本では、すでにいくつかのゲノム編集食品が開発され、流通しています。具体的な例を知ることで、ゲノム編集食品をより身近に感じられるかもしれません。
例えば、以下のようなものが挙げられます。
- 高GABAトマト(シシリアンルージュハイギャバ): 血圧低下効果が期待されるGABAという成分を多く含むように改良されたトマトです。
- 肉厚マダイ: 通常のマダイよりも成長が早く、身が厚くなるように改良されたマダイです。
- アレルゲン低減ジャガイモ: ジャガイモに含まれる有害物質(ソラニンなど)を減らすように改良されたジャガイモです。
これらの食品は、品種改良では難しかった特定の良い性質を効率的に高めることを目指して開発されています。スーパーなどで見かける機会が増えるかもしれませんので、興味があれば、厚生労働省の公開情報をチェックしてみるのも良いでしょう。
よくある誤解を解消!
ゲノム編集食品について、いくつかよくある誤解があります。ここで整理しておきましょう。
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誤解1: ゲノム編集食品は「遺伝子組み換え食品」と同じものだ。
- 事実: ゲノム編集と遺伝子組み換えは、どちらも遺伝子を操作する技術ですが、その手法や目的、そして法規制上の扱いは異なります。遺伝子組み換えが「他の生物の遺伝子を入れる」のに対し、ゲノム編集は「その生物が元々持っている遺伝子を編集する」という点で明確に区別されます。
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誤解2: ゲノム編集食品を食べると、体内の遺伝子も編集されてしまう。
- 事実: 私たちが食品として摂取する遺伝子(DNA)は、胃腸で消化され、分解されます。ゲノム編集食品のDNAだけが特別な影響を及ぼし、私たちの体内の遺伝子を変化させることはありません。これは、通常の食品に含まれるDNAと同じことです。
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誤解3: 自然界にないような不自然な生物が作られる。
- 事実: ゲノム編集は、特定の遺伝子を狙って編集する技術であり、自然界の突然変異と同じような変化を起こす場合もあります。品種改良の効率を高める技術であり、全く新しい生物を生み出すものではありません。
これらの誤解が解消されることで、ゲノム編集食品に対する漠然とした不安も和らぐのではないでしょうか。
食卓でゲノム編集食品を選ぶために
ゲノム編集技術は、私たちの食糧生産の課題を解決し、より豊かな食卓を実現する可能性を秘めた新しい技術です。食糧問題、環境問題、栄養改善など、様々な分野での貢献が期待されています。
大切なのは、特定の情報に惑わされず、科学的な根拠に基づいた正しい知識を持つことです。ゲノム編集食品は、厳しい安全性の評価を経て私たちの食卓に届けられます。
日々の食料品選びにおいて、この記事で得た情報が、皆さんの安心につながり、より納得のいく選択をするための一助となれば幸いです。気になる点があれば、国の公開情報を参照するなどして、ご自身で情報を確認する習慣を持つこともお勧めします。